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オープンアクセス

 最近,研究論文などの学術情報を無料でインターネットで公表しようという動きがあるようです.現状の権威ある論文ジャーナルは無料ではありません.大学内のネットワークからアクセスできるジャーナルは大学予算で払える範囲で選択されたジャーナルのみです.一般にこういうジャーナルの大学のような法人相手の値段は大変高額です.逆に個人向けの金額は非常に割安にして,個人契約を促すような雑誌もあります.American Geophysical Unionの雑誌などはそういう金額設定で,多くの大学は契約しておらず.個人で買える微妙な金額で,個人で契約するほかないです.大学公費から立替払いができるので,お金があるうちはいいんですけど・・・.
 学術情報は広く公開された方が人類の知の増加には有益であるという観点から,お金のある人だけアクセスできるような現状はこのましくないということで,学術情報のオープンアクセスという考え方が出てきています.オープンアクセスを売り物にする出版社がぽつぽつ出てきているようです.しかし,まだまだ権威のある出版社ではないので,著者を確保するのに難しい面があるようです.
 一方,権威ある雑誌に論文が受理されたときに,自分の論文をオープンアクセスにするというオプションも出始めています.しかし,そのためにはオプション料金が大変高くつくようです.だいたい一本論文が受理されると,出版費として6−7万円くらい取られるのですが,オープンアクセスにするには,その倍近くはらうことになるのでしょうか?

 先の年度末くらいでしょうか?あるよくわからない外国のオープンアクセスパブリッシャーから「今度地震の研究という本を出すから,執筆しませんか?審査しますので要旨を送ってください.」という依頼がきました.ちょうどお蔵入りしそうなデータを発表するのに丁度いいかなというネタがありましたので,いかがわしいと思いつつ,好奇心もあいまって,要旨を送ってみました.すると,そのネタで書いて良い,という結果がきまして,一生懸命書きまして,先日完成版を送ったら,一週間ほどで受理通知がきました.なんか「受理します,おめでとう」みたいな手紙が来ました.あまりにあっけないので,やはりよほど執筆者がいないのだろうと思いました.これ受理されると,590ユーロ払うことになります.なんかお金で業績を買ったような気分になります.一応紙の本にもなって,一冊現物が送られてくるようです.印税はゼロ.オープンアクセスですからね.

 通常の雑誌に投稿すると二人ほど専門のレビュアーに回されて,2ヶ月くらいかかって結果が来て,多くの場合メジャーな修正がかかって,あるいはリジェクトくらったりして,修正に対応するのも苦痛,リジェクトされても苦痛という場合が多いです.ですが,業界ではそういうプロセスを経て,権威ある雑誌に論文が載ることが評価に繋がるのであって,それがない論文はまぁ,日記とたいして変わらないのであります.権威ある雑誌の中でもレベルがあって,どの雑誌に載ったかは研究者の権威に直結します.雑誌の権威のレベルはインパクトファクターという,ある期間に引用される論文数などから算出される値で決まります.また,個人レベルでは,その論文が何回引用されたかということも,逐一調べられるようになっていまして,その数が,実質の評価基準になるのかもしれませんが,昇進や採用にそこまでチェックされることは一般的にはまだありません.

 このオープンアクセスパブリッシャーに書いた論文ですけども,かなり一生懸命書いてしまいまして,自分のなかではなかなかできが良いと思い始め,権威ある雑誌に投稿したい誘惑に駆られました.タイトルもちょっと換えて,引用論文のフォーマットなども想定する雑誌用に変換したりして,かなり本気で考えたのですが,最終的には思い直して,このパブリッシャーに出しました.なんといっても書くきっかけを与えてくれたというのが大きいです.もともと書くつもりのなかったネタだったので,やはり仁義を切らねば,と考えました.
 現状でオープンアクセス出版社に論文を公表する価値はどうなんでしょうね.ちゃんとISBNのつく本なので,一応書籍執筆という業績にはなるでしょう.あとは,一応、遠い外国から依頼が来たということだけでも,少し誇らしく思えるところでしょうか?