野外調査

 今週の月曜日から、米国の付加体研究者と一緒に高知の野外調査に行って来ました。なかなか面白いアイデアを持っている方で、私もちょっと見る目が変わりました。

 うーん、彼の仮説を証明するにはどういうデータを取ればいいか、どういう産状に注目すればいいか、なかなか好奇心をくすぐられるいい調査でした。やはり鍵は物理観測ですね。物理観測は基本的に”現在の”地球の状態を遠隔操作で理解する手法ですが、大量にデータが取れて、なにやらぼやっと傾向のようなものが現れる。例えば、現在のアラスカ沖とチリ沖では、あるデータに異なる傾向が現れます。微小地震の起こり方とかですね。実は高知の地質を数千万年の時間軸で見ると、アラスカ沖みたいな時もあったし、チリ沖みたいな時もあったので、高知の地質を見るだけで、地球物理観測で現れた両方の違いを岩石の変形の違いとして捉えることができるのではないか?といった視点です。面白いですね!

 これまで同じ場所を何度も調査しておりますが、このように新しいアイデアを持つと同じ場所に行っても全く異なる視点で異なるものが見えて来ます。まったく地質はどれだけ奥深いのか!高知の地質は宝の山ですね。

 まだぼやっとしたアイデアなのですが、やっていくうちにどんどん形がしっかりと現れてくることでしょう。

 で、米国の付加体研究者と一緒にやってきた修士の学生さんがいるのですが、彼女はそのまま高知に残りまして、夏までの二ヶ月半の間、高知で研究を続けます。すぐ横に研究の話し相手ができたので、私の頭がもっと研ぎ澄まされていくことを期待しています。学生なのでまだ知識が少ないところがある感じですが、ちゃんとこの夏のプロジェクトマネーを取って来て、先生からも別に給料をもらっているので(欧米の理系ではほぼ当然のこと)、研究に対する姿勢がしっかりしています。日本の大学院生は、研究を仕事と認めてもらえず、先生の弟子で未熟者な学生といった風に社会的に思われているので、タダ働きどころか、高い授業料を払って先生の指導をありがたくいただく立場となっています。国際的には異常なことです。国際的には日本の大学院生は”奴隷”と言われております。というか、わたしが積極的に奴隷みたいだと言いふらしております。でかいプロジェクトを取れば、日本でも何年かはポスドクを雇うことが一般的に可能となりつつあります。しかし、米国やヨーロッパのように修士の院生にプロジェクトから給料を払うのは日本ではほぼ不可能です。

 まー、いっても仕方ないことだろか。私の場合、高知の学生とのんびりやることで十分満足していますけども。この日本の状況で国際的に十分戦えることを示してやるのだ!と、カッコつけていきます。のんびりと戦うみたいな、一見矛盾した文脈ですが、よりカッコつけている感じを表現しております。