ドイツ人が日本語論文を読んでいた

 ドイツ人の研究者が突如、私のオフィスに入ってきました。彼は私の最初の米国掘削船研究航海の時のコチーフサイエンティストの一人です。ですが、専門が全く違うので、普段はほとんど話する機会はありません。珍しい人が来たなぁ、とややびっくりしていると、

「えーっと、ちょっと質問があるんだけど・・・。」

と、手に持っている書類を見せてきました。

見るとなんと日本語の論文。なんという飽くなき探究心でしょう。トップ研究者とはかくあらん、と思いました。

で、まさか全訳する羽目になるのかと思いきや、キーワードは捉えているらしいです。

「この辺に硫酸イオンの減少について書いてあると思うんだけど。」

どうやって読み解いたのでしょうか?硫酸だけ調べたとか、かな?深度とともに硫酸イオンが減少し、ある深さでゼロになる、という文章。かつ、掘削坑は二つあって、α1とα2(これは彼も読める)でそれぞれその深度が異なるという部分でした。

 恐ろしいことに、彼はほぼ理解しており、単に確認だけでした。この深度で硫酸イオンがなくなるってことでメタンは逆に増加するからある意味、この深度が遷移帯ってことだよね、ということでした。

 全くその通りだよ。

「ありがとう」

「どういたしまして」

いやー、びっくりした。

と思って、すぐ書きました。