オペラ

 土曜日、午前、午後と買い物に行きました。午前は近所のスーパー。午後は自転車で5キロ弱くらいのところの巨大のショッピングモール。どちらも小雨がちらついて不快でしたが、下は普通のズボンで上にゴアテックスのジャケットを着ているだけでなんとかなる程度です。こういう雨がキールの特徴みたいです。

 ショッピングモールは前回職場の日本人の方に連れて行ってもらったところなのですが、短時間だったので今回はみっちり回りました。チーズや肉の量り売り、日本食材コーナー(小さい)、輸入物の酒のコーナー、服、レジャー用品などなんでも揃っておりました。また、専門店街も見て回りました。本屋でキールの絵葉書。それから、スポーツショップで、部屋用スリッパサンダルと野外調査用のトレッキングシューズを買いました。実は5月中旬に野外巡検に同行できることになりまして、そのために準備したものです。できるだけ安いのをと思って探したのですが、やはりゴアテックスのシューズがかっこよく、他のまがい物を安く買う気になれず、普通に高い靴を買ってしまいました。持って帰らないとな・・・。

 とか、やっているうちに、夜になりました。夜8時からオペラハウスにオペラを見に行きました。先日あった日本人の方の旦那さんがオペラ歌手をしており、チケットが安く手に入ると聞いて、厚かましくも早速お願いしてしまいました。当日券チケット売り場で名前を言えば、取り置いてあるので受け取れます、と聞いていたので、ちょっと早めに行ってチケット売り場らしきところで名前を言うと、すぐチケットをいただけました。チケットを切ってもらって中に入ります。

「上の階ですよー。」

と言われたので、とりあえず上に行ってみると、コートを預けるカウンターがありまして、ちょっと先にはビールやワインを飲めるバー。途中トイレ退席しないよう、飲み物は控えました。まだ開演まではやや時間がありましたが、席で待つことにしました。えーっと、座席の番号を確かめると、なんと二階席の一番前、で、えーっと、番号は、なんと超ど真ん中でした。オケが一段低くなっているピットで練習しています。その上に舞台。両方バッチリ見えるすごい席でした。関係者席とのことで、悪い席にはならないとは言われておりましたが、驚きです。

演題はカルメン。事前にネットで調べたところでは、舞台はスペイン、言葉はフランス語、カルメンに恋い焦がれた男が、振られて彼女を殺してしまう話。日本人の方はこの恋敵ともいうべき重要な役です。

ついに開演!かの有名なカルメンの曲が流れます。聞きなれた曲なので安心です。生演奏の迫力!なのですが、うますぎてCDみたいに乱れの無い演奏です。うますぎじゃない?音響がよいのだろうか?

役者がどんどん出てきて、すごい声量で生歌!迫力満点です。言葉はさっぱりわかりませんが、ネットで調べたあらすじを頼りに、今はどういう場面かはわかります。舞台の上には電光掲示板があって、ドイツ語の字幕が表示されています。伝統的なオペラもこうやって市民に親しみやすくしているのですね。周りをみると年配の方が多いような。ちらほら若い子もいますが。

間に休みが入って3時間の長丁場。カルメンが首をかっ切られて幕。そのあと、出演者への鳴り止まない拍手で、満足して終わりました。夜の11時過ぎです。

さぁ、これからお金を渡しに行かねばならない。地下の職員レストラン(誰でも入れるとのことだが)で、恋敵役の旦那さんと落ち合ってお金を払ってほしいとのことでした。これは楽しそうである。しかし行き方がわからない。出口で受付の方に聞いてみます。

「これから地下に行かねばなりません。レストランがあると聞いたのですが?」

「あー(笑顔)。」

「どうやっていったらいいですか?」

「はい、あります。ご案内します。こちらです。」

とついていくと、すぐに地下への階段。

「この階段を降りて二つ目の右の扉を降りてください。」

「二つ目・・・、降りるんですか?」

「もうそこがレストランなのですぐにわかります。」

なんのことは無いやりとりですが、対応してくれたおねえさんの印象が良かったので詳細に書きました。

 行ってみると、倉庫の入り口のようなねずみ色の味気ない扉が二つならんでいる。奥の扉を開けてみると、数段の階段の先に赤い広い部屋のレストランがありました。キッチン奥の店員以外まだ誰もいない。帰り支度をしてくるんだろう、ということで、ビールを買って飲んで待ってました。すると、ぱらぱらと人が増えてきて、中には日本語をしゃべっている女性二人も。うーん、別に日本人だからっていう理由で話しかけたものかどうか・・・、と黙ってビール。

 とそこに、恋敵役の旦那さんが現れました。

「あ、お疲れ様です。はっしーです。」

「はっしーさんですね、どうでしたか?」

「やっぱり生はすごい迫力ですね。」

「楽しんでもらえて良かったです。」

と、少し言葉を交わしたところ、ドイツ人のお客さんか関係者か、どんどん旦那さんに話しかけてきます。人気者です。楽しそうに話している姿をみているだけで、こちらもホンワカいたします。

 「あ、すいません、他の日本人の仲間もいるので、一緒にどうですか?」

と言われて、先ほどの日本人の方と合流して飲み会に。オケのほうでバイオリンやビオラをやっている日本人の方が3名、旦那さんと私で5名の飲み会となりました。音楽業界の日本人コミュニティー的なものがあるようで、キールだけではなく、別の街のオケなどに移動することもあるようです。

 業界の専門的な話が飛び交ったりしつつも、それも面白いです。私の専門の話、音楽家になるまでの話、外国で仕事する苦労、音楽家のやりがいなど、大変興味深い話ができました。気がつけば夜1時過ぎ。みなさんと別れて、自転車で自宅に帰りました。