近年の巨大地震と東北地方太平洋沖地震

東京大学地震観測所特設ページ
http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201103_tohoku/
に近年の巨大地震がまとめられています。地図で示されているので、見やすいです。破壊領域も書いてあります。


1952年 カムチャッカ地震 Mw 9.0
1960年 チリ地震 Mw 9.5
1965年 アラスカ地震 Mw 8.7

2004年 スマトラ島沖地震 Mw 9.0
2005年 ニアス島地震 Mw 8.6
2007年 ベンクル地震 Mw 8.5
2008年 四川地震 Mw 7.9
2010年 チリ中部地震 Mw 8.8
2011年 東北地方太平洋沖地震 Mw9.0


 下のおじいさんの言っていたチリ津波は1960年のことです。50年前、やはり東北地方は津波にやられました。チリ地震を教訓に、より高いところへ引っ越したのに、また、今回やられた方もいらっしゃるようです。

 スマトラ近辺の地震は3年間に渡る連動の可能性が指摘されています。今回の東北地方太平洋沖地震の他地域への影響を検討しているところと思われます。

 今回の地震は典型的な沈み込みプレート境界地震です。上記の地震のうち、四川地震以外はすべて沈み込みプレート境界地震です。東北地方沖は太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込んでいます。東北地方ではここまで巨大な地震はほとんど想定されていない地域でした。
 世界の沈み込みプレート境界は全長約4万キロメートルにおよびます。この沈み込みプレート境界は大きく二つの種類に分けられます。付加マージンと削剥マージンです。
 付加マージンは付加体という地質体が成長しているところで、堆積物がどんどん押し付けられて太っているところです。削剥マージンは逆に海側のプレートが陸を削り込んで、陸を減らしているところです。Bilek(2010)によれば、上記の沈み込みプレート境界における巨大地震はすべて付加マージンで起こっており、削剥マージンでは起こっていないことが指摘されておりました。それが今回覆りました。Bilek(2010)では、削剥マージンは、むしろ津波地震地震規模の割に津波が大きい地震)が起こりやすいと述べています。この論文の時点では、沈み込み帯の種類と地震の種類がよく一致して分類されているように見えました。しかし、今回は巨大地震の上に巨大な津波が、削剥マージンで起こりました。

Bilek(2010)による沈み込み帯の分類。青が付加マージンで、赤が削剥マージン。星はMw9クラスの巨大地震。緑の点は津波地震

 Nanayama et al., (2003, Nature)は、津波堆積物の調査から、北海道太平洋沖で平均500年周期で、特別な通常ではない巨大地震が起こったことを指摘しています。これも今回の地震と同じプレート関係で、削剥マージンです。削剥マージンでは、より短い周期(およそ100年程度)のより小規模の地震が繰り返しており、その繰り返しの中の4−5回に一回くらいの割合で、通常とは異なる超巨大地震が起こるという指摘です。今回はその一回になってしまったのでした。実は同じようなことは西南日本でも近年指摘されつつあります。
 近年のGPSの観測と、海中の観測網の不足を補う理論?から東北地方の歪みのたまっているところを推定したところ、まさに今回の地震の巨大な破壊領域が浮かび上がりました(Hashimoto et al., 2009, Nature geoscience)。南海トラフにおいても同様の解析がなされるべきでしょう。
 時間や場所によって規模が違うのはなぜでしょうか?場所による違いが顕著だと思っていたら、そうでもないようです。時間による変化と捉えるにはまだまだデータが足りません。