ロンドン

 今ロンドンにいます。初日はヒースロー付近のサニングデールという町に住む研究者仲間のところに泊めてもらいました。彼女はイタリア人。旦那はアメリカ人。旦那さんは私が今所属しているドイツの研究所で5年間研究者をやっていたことがあるそうです。世界は狭い、というか、ドイツの研究所が顔が広いのでしょうか。

 研究者仲間と現在やっている研究の話、国際掘削プロジェクト周辺の話、研究者の人間関係の話など、仕事に関わる話の他にも、ヨーロッパの多民族化の問題、アメリカ・イタリア・ドイツ・イギリスの文化の違い(私からすると似ているのだが違うらしい)、学校のシステムの違いなどいろいろ話しました。大変楽しかったです。晩御飯は乗馬クラブ付属のレストランで、旦那さんが好きなハンバーガーが食べられるところでした。私はステーキを頼み、ビールをパイントで二杯飲んで、さて払おうかと思ったらいつの間にかすっかり支払済でご馳走になってしまいました。一人で高いの頼んじゃったよー。

 おうちは3階建で、一階はキッチンダイニング、二階が寝室と居間、三階が子供部屋、客室、仕事部屋などでした。バックヤードは細長くちょっと小さめ。芝生と植木が綺麗でした。鳥がたくさん集まってくる場所でした。

 サンニングデールの駅まで歩いて数分のところで、電車で1時間ほどでロンドンのウォータールーまで直行です。便利でした。

 

 ロンドンでは日本人に会う確率がキールに比べると格段に高く、日本人密度が高い印象です(日本語そのもの or 日本語英語でわかる)。中国人、韓国人などのアジア人、黒人さんもまま見ますが、キールで見るイスラム圏の人々、トルコ系の人々よりだいぶ少ないと感じました。キールでは黒人さんが少ないかな。

 とはいえ、日本に比べれば圧倒的に混在化していると思います。イギリスがユーロから脱出したいと思った理由の一つが国際移民の増加と言われておりますが、キールに比べればまだまだ少ない気がします。それでもコンフリクトしているということなので、イギリス人が保守的なのか、ドイツ人が忍耐強いのか。

 イタリア人の研究者仲間に聞いたところですが、イタリアでも国際的な混在が進んでいるそうで、中でも中国人の評判がよくないそうです。イタリア人にとって私も中国人と思われるので、日本から来たと言ったほうがいい、と言われました。彼女は年に二回以上イタリアに帰っているので、最近の情報です。イタリア人は正直そうですね。

 イタリアではスリが多いと警戒しているのですが、不法滞在者が多い中国人が狙われやすいとのことです。銀行口座やクレジットカードが作れず、現金を持ち歩いていることが多いからだとのことでした。

 今日イタリア・ローマに移動です。

残り3週間

 どんどん海外滞在の日が減っていきます。残り3週間。今週末から2週間ヨーロッパをめぐる旅に出ます。ロンドンの研究者仲間に会い、イタリアの地質巡検、最後にインスブルックの同僚と研究打ち合わせと大学で研究発表の予定です。キールに戻って四日間滞在して、すぐ日本に向けて発ちます。

 ということで、本当に本当の最後の追い込みで自分の論文のリバイスをやっています。今日締め切りだったのですが終わりませんでした。ですが今日がんばって、大きなところは終わりました。図面をちょっと直して、明日明後日には投稿できそうです。ほんとギリギリになっちゃった。

 それからもう一本、投稿中の論文のディシジョンレターが来て、なんとか超超メジャーリビジョンで生き残りました。ほぼリジェクトと思われるレビューコメントでした。クリティカルな自己矛盾や難しい最新の論文についての検討など、対応が苦慮されるものが多数です。3ヶ月の猶予をもらって、さらに延ばしてもいいらしいです。なんて優しいレビュワーなのだろうか。おもしろいことにレビューコメントには通常リジェクトと思うとかメジャーリビジョンだとか、レビュワーの判断が示されることが多いのですが、この雑誌にはそういったレビュワーの判断をコメントに書かないようです。エディターの判断が強いのかもしれません。せっかくいただいたチャンスですのでなんとか対応したいですが、夜にふとどうすれば対応できるかモンモンとするくらいやばいです。通ればすごいのですが・・・。これも旅行中含めてちょろちょろと対応していこうと思います。

 ヨーロッパの旅からキールに帰ってきてからあまり時間がないので、引越し準備を早々にやっておりました。住んでるゲストハウスのあげられるものを、同じゲストハウスに住んでいる日本人の方にごっそりもらってもらい、だいぶスッキリしました。あとは研究室の本などの荷物と、最後のゲストハウスに残っている細々したものをダンボールに詰めて送るつもりです。最後に残るのは旅行用の服やら洗面具くらいになります。

 ハンブルクから帰国便出発は21日夕方。22日に帰国です。

文化の違いアルアル

 日本人が西洋文化に触れて驚くと思われること、多分定番のアルアルをつらつらメモっときましょう。

 

・職場やアパートでは知らない人にも必ず挨拶。

 これいいですよ。米国でも同じ印象でした。もしかしたら怪しい人ではないことをいちいち確認しなければならない治安のせいなのかもしれないですが。日本で継続しようとすると、恥ずかしい気分になります。

 

 ・乾杯するときは目を見る

 これもいいですね。わざと目力いれてやる人もいます。ビール乾杯するときに目線を合わせると、すぐ仲間意識が芽生えます。恥ずかしがり屋の日本人向けではないですね。

 

 ・店員が冷たい(感じがする)

 日本人の店員の腰の低さは異常じゃないかと思うくらい、こっちの人は普通に店員をします。お客様は神様じゃない。こう書くと当たり前で、お客様だって店員だって人間ですね。逆に、対等に店員とお客さんが世間話したりしてます。それはそれで楽しそう。

 

 ・日曜は店が閉まる(飲食店はやっている)

 アメリカではそうではありませんでしたが、ドイツでは一般的のようです。これほんとびっくりした。慣れると家でのんびりできて、悪くないです。充電した気になる。

 

 ・ドアを開けてあげる

 後続の方のためにドアを開けて待ってあげる、同じ向きでハチあった場合はドアを開けてあげて、お先にどうぞ、とやる。これかなりアルアルですね。これは日本に帰ってからも継続しやすい。

 

 ・レディーファースト

 これもほぼ当たり前な感じ?自然すぎてわからない?バスの乗り降りでやや感じます。

 

 ・列の割り込みは当たり前

 ドイツではそうみたいです。バスに乗るときに最後になってしまうことが多かったですが、最近は負けないように隙間に入り込んでます。米国ではちゃんと並んでたようなきがする。

 

・その他

 あとなんでしょうね。米国では冬でも半袖みたいな、寒さに異常に強い人がいました。こちらでも肌寒いうちから海で泳ぎ始めたりして、やっぱり白人は寒さに強いんだなーと思っていたのですが、秋頃にはみな厚着し始めて、私と感覚が近い人も思ったより多いみたいです。米国のときほど異常を感じませんでした。

 また気がつけばなにか書きましょう。

 

 

ドイツキール日本人会

 こないだの日曜日はキール日本人会でした。大学のゲストハウスの一階にカンファレンスルームがあり、そこで集まるのがここ最近の活動だそうです。すでに五十年近く続いている会とのことで、大変伝統があります。

 ゲストハウスはKiellinieというキールでも比較的高級な地区にあって、家具、食器等が備え付けられており転入転出が楽でいいのですが、ちょっと平均よりも家賃が高めだそうです。基本的に短期滞在者のためのもので、出入りが激しいです。きっかり一年と決まっている私で長い方だと思います。ゲストハウスにいる人しかカンファレンスルームを借りられないので、安定して日本人がゲストハウスにいることが重要です。管理人のリッターさんがどうも日本人を優先的にこのゲストハウスに入れてくれているのか、現在は日本人が4部屋借りています。他にもゲストハウスがあるのですが、そっちには日本人はいないようです。

 土曜日にハンブルクへ日本人補習校へ通う子供達が多いとのことで、伝統的に日曜日に日本人会を開くことになっているらしい。先日の日本人会でも子供達が7、8人来ました。子供は癒されますね。

 食事をそれぞれ持寄るタイプの会で、出汁の効いた美味しいご飯が食べられます。私はとても人に出せる料理は作れないのでワインを出したりするのですが、今回は他の日本人の方のおかずに合わせるということで、白米のご飯を炊いておいてほしいと頼んでくれたおかげで、少し食べ物にも貢献できました。いや美味しかったです。

 はじまって間もなくからワインを飲み始めました。前日の教授宅ホームパーティーからの流れでちょっと二日酔い気味の迎え酒だったのですが、楽しく飲めました。

 全部で30人ほど集まりまして、多くの人たちとお話することができました。めちゃくちゃしゃべった。日本語はやっぱり楽ですわ。しかも、やはり海外に出てくるだけあって、みなさんとてもアクティブで明るいし、日本にいるときほど気を遣わなくて済む方々なので、ほんと楽しくお話しできます。

 一旦夕方おひらきになりましたが、当日オペラの公演があるという日本人の方とオペラ公演後にオペラハウスの下のレストランで合流して、また飲みました。ここでもめちゃくちゃしゃべりました。大変楽しかったです。

ドイツ人との議論

 先週末は土曜日の教授宅ホームパーティー、日曜日のキール日本人会で楽しく過ごしました。飲みすぎました。

 教授宅ホームパーティーでは、職場の同僚とその奥さん方が集まりました。みんなドイツ人。一人だけ日本人。国際海洋掘削プロジェクト関係で札幌に3年住んでいたことがある夫婦がいて、札幌ネタで盛り上がりました。ときどきドイツ語のみのシーンがあるのですが、その時でも英語に似た単語を拾いに精神を集中して聞き入ります。すると、少なくともどんな内容の話をしているのかはなんとなくわかるのです。そのとき、どういう態度で議論しているのかを観察します。ある時はサイエンスの議論。結構白熱した態度で議論しています。ある時は政治の話。意外やユーモラスにゆったりした態度で議論しています。話が一段落したところだと思うのですが、突然英語になり、私に今何の話をしていたのか教えてくれます。

「いやー、政治の話をしているのに、冷静にユーモラスに議論しているのが印象的ですね。日本ではあまり政治の議論を突っ込んでしない傾向があるし、下手にやると感情的になることがよくあります。なにか結論をもとめに行ってしまうし、意見が違うと保身に走る傾向があります。」

とか、上の日本語を逐語的に英語では言えなくて、日本人は政治議論で戦っちゃうとか、真面目すぎて反論に対して冷静に答えられないとか、そういった感じで英語にしています。

 この教授は海洋掘削関係のヨーロッパ側国際機関のリーダーをやっている方で、すごいえらい人です。今、日本では文学や理学を軽視する傾向があって、応用や工学へ集中することが議論されているけど、ヨーロッパではちゃんと基礎研究の価値が社会的に認知されている印象があります。どうやって基礎研究の価値を社会に説明しているのか?と聞いたところ、教授曰く「説明する必要はない。結果が価値を示している。」とのこと。すでに文化として定着していて、言葉にする必要すらない、ということらしいです。おそろしや。

 また別の先生は、ドイツ人がこんなに英語がしゃべれるようになったのは本当つい最近のことだといいます。その先生が学生の頃はそんなに熱心に英語教育をしていなかったとのこと。新しい英語教育のおかげで私もドイツ語なしで楽しく生活できます。日本も20年とかでもっと人々が英語をしゃべれるようになるのでしょうか?日本では小学校からの英語教育が議論されていますが、その前に日本人としてのアイデンティティーを教育するのが先だろう、日本の文化が変化することが心配だといった、やや否定的な意見もあります。ドイツ語は英語に似ているし文化も英語圏と似ているから、あまりそういったことは問題ではないようです。

 はたまた、ドイツ人のゆったりした生活にもかかわらず、効果的に先進国になっていることがすばらしい、というと、札幌在住経験のある先生からは日本人だってすばらしいよ、完璧にこなそうとする姿勢、常に他の人を尊重して配慮を欠かさない点は印象的だ、当然ドイツと違うけど、どちらがいいかはわからないよ、と言われました。日本人のそういう性質のせいで、世界に類のない安全な社会があるのかもしれません。財布を拾っても盗まないとか、ありえないですよね。

 さらに、ヨーロッパでは国ごとに意見の違いはあっても、それを乗り越えて経済を統一し、国際的な協力関係を築いている、日本も中国や韓国とのいざこざを乗り越えて協力関係を作っていかないと、損してしまうよ、と言われました。確かにオーストリアの人たちとの議論が思い出されます。いろいろ意見の違いがあっても、協力する姿勢がヨーロッパの人たちにはあります。だが、どうでしょうね。ドイツはEUシステムで恩恵を得ている方だから、余裕のある発言ができるのかもしれません。

 などなど、すごい突っ込んだ議論ができて、大変楽しかったです。多分ドイツでも超エリートの集まりだと思います。ほんと楽しかった。

 なんか読み返してみると、クソ真面目な話ばかりしているようですが、もちろん馬鹿話もいっぱいします。しかし、もっと強く言いたいことは、例え上記のような内容でも、ゆったり興味深くユーモアを交えて議論しています。そこがいい!

 ちょっと長くなったので、キール日本人会の話はまた後ほど。